「テンペスト」はシェイクスピアが単独で書いた最後の作品です。書かれたのは1611年頃。晩年期のロマンス劇中、最大の傑作です。
当時、英国民の関心を集めていた海難事故のバミューダ島が舞台と言われています。
物語の展開は、魔術を持ったプロスペローにより決定されています。あたかも作者のごとく、登場人物を
意のままに動かしているのです。登場人物も去り魔術も捨て去った最後の場面で、プロスペローははじめて一人の登場人物にもどります。
この作品では、不思議なもの、ロマンティックなもの、醜悪なものと、変化に富んだ要素がみごとな調和をみせて、美しい世界を織り上げています。一方で、島の世界は現実の人間社会を映し出しています。
プロスペローは憎しみや復讐を乗り越え、最後には調和と和解に達し新たなる出発をします。だからこそ不思議な島の物語が、「再生の劇」として時代を越え読む人の共感を呼ぶのです。
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