はじめに
法律を守っていれば幸せになれるか? 悪法まで守るべきか。
第1部 社会への提言
第1章 福島原発事故について
1.原爆と原発
――原子力発電と原子力開発の技術を持つことは原子爆弾を作る能力があるということ
原爆と原発、被爆と被曝は、どこがちがうのか?
2.原発事故の責任はだれにあるのか――法的責任と社会的責任を考える
東日本原発大震災からの教訓/広く社会的責任という観点から考えよ
東京電力の元取締役は、民事裁判を待たずに、数百名の規模で賠償すべき
中曽根元首相をはじめ、歴代の首相にも責任がある
日本の法律では想定外の事態/原発事故被害は戦争被害と並ぶ
むやみやたらと刑事事件にしてはいけない
3.裁判所は役割を果したか――原発を合法としてきた裁判官
最高裁の狭き門/原発差し止め訴訟は敗訴している
4.原発推進議員は辞職せよ――立場を明らかにさせて総選挙をしよう
国会議員は原発推進に賛成か反対かを明確にすべき
政権によっては情報はもっと隠蔽されていた
5.原発事故に対する国民の責任――正確な情報を知り、議論に参加すべきだった
情報公開を働きかけ、議論に参加していこう/住民投票から国民投票へ
6.予防の重要性――原発災害の多様な発生と対策をオープンに検討すべきだった
被災地へ迅速な支援をするために/予防の重要性
社会のシステム作りと情報公開。刑事罰に頼っていてはシステム作りが遅れる
7.補償問題について――補償の不平等感を乗り越えるために
補償の順序/補償は分割責任論で考える
8.人体被害は長期的補償を――子どもの被害予防が最優先
チェルノブイリに学べ。子供達を守れ/予防が大事
9.対話型情報社会へ向けて――頼りない政治と裁判を超えて
原子力発電所を止められない日本/最高裁が原発推進のお墨付きを与え続けている
裁判所での対話がない
警察や検察は市場などの社会システムを壊すような取り締まりをしてはいけない
日本の議会制民主主義が発展しなかったのは、忍耐強い対話が欠けていたのが原因
法廷のテレビ中継で、裁判に信頼を取り戻せ
第2章 司法・検察・警察・自衛隊の改革
1.司法を変えるチャンスだ
――民主党・仙石由人元内閣官房長官 谷垣自民党総裁殿への手紙
尖閣諸島をめぐる中国船衝突事件──逮捕しなくてもよい
警察、検察、裁判官は外部からの充分な評価に耐えられるようなシステムにするべき
2.特捜検事の証拠隠滅は氷山の一角――証拠開示と取り調べ可視化へ
元厚生労働省局長の村木厚子さんの事件について
「証拠全面開示」と「取り調べの可視化」をしない限り、冤罪事件はなくならない
3.情報全面開示への第一歩――警察庁長官銃撃事件の公訴時効成立後の発表について
莫大な税金を使って収集した捜査資料はいわば国民の共有財産である
不起訴事件でも、捜査資料は公開すべきである
4.最高裁の改革と司法修習の廃止を――最高裁と検察庁は制度改革に反対し続けている
最高裁の判事を弁護士、学者、マスコミの出身者で過半数とするように内閣が任命すべき
司法試験合格後全員に2年間の有給の弁護士研修を義務付ける法案を作る
5.官庁と企業は弁護士を採用すべし――研修弁護士制度の実現
弁護士をもっと活用する社会にしていくことが大切
官僚の業務を弁護士が行うことにより、硬直化した業務を改革することができる
税金が何に使われるのか、税理士は説明しているだろうか
6.平和維持隊創設へ――自衛隊の解散と新しい軍隊
平和ボケの日本/平和維持隊法案を作り、国防意識を上げ、災害救助の人数を確保する
7.一部の者の逮捕では役に立たない
――警察・検察は政治、選挙、市場、医療には不介入で
民主党の小沢一郎前代表の刑事事件について
政治、選挙、市場、医療、会計の分野では何が正しいのか、はっきりしない
8.日本の裁判所は少数者を守らない――裁判官と行政の密約
少数意見・少数者を守るのは憲法では裁判所だが、ほとんど機能していない
「行政に口出ししない」ということで裁判所と内閣はうまくいっている
第3章 医療・経済・政治の改革
1.生殖補助医療支援基本法を作ろう――野田聖子議員の妊娠と出産
着床前診断について
2.漫画家は文化向上に向かい頑張るべし――「東京都青少年健全育成条例」に関して
エロマンガ規制とはどのようなものなのか
青少年に対する性教育、妊娠環境作り、妊娠後の受け皿がむしろ重大なものである
3.延滞税14・6%は悪法である――延滞税は3%に引き下げ、中小企業を守れ
税金倒産が増えている/延滞税は3%にして中小企業を救え
4.デフレ経済下の中小企業対策――免除益課税の廃止へ
実現した「法人税の繰り戻し還付制度」とは
学者、政党、財務省はデフレ経済対策を真剣に議論せよ
5.日本経済活性化のために――10年から15年で官僚を交代させよ
民間主導がうまくいかないのは「政治主導」と「官僚」の関係が問題
官僚は、法システム構築に必要な勉強をしていない
公務員採用試験も試験内容を変えて、知識や教養のある人材を採用する
6.辻元清美議員のかろやかさ――党議拘束は7割のみ、3割は解除する
民主党へ入党した辻元清美議員
党議拘束をかけないと緩んでしまう政党なら、分裂すればいい
第2部 悪法をなくし、良き法を育てるにはソフトローを活用する
第1章 法とは何か
1.「法」とはなにか。法の起源――人間社会の秩序維持は、宗教から法律へ
人間社会が進歩し文化が発展するにつれ、法律が人々の生活を守ることになる
2.ハードローとソフトロー――通達や通知がソフトロー
ハードローとソフトローを含めて、これを「法」と呼ぶ
ソフトローの法的拘束力/生殖医療のガイドライン/規制への抵抗
3.「法化社会だから法律を守れ」は正しいのか
法令順守が会社員をがんじがらめにしてきた
行き過ぎた法令順守は国を滅ぼす/良き法と悪法の区別
第2章 ソフトローはどのように積極活用すればいいのか
1.悪法には「赤信号みんなで渡れば怖くない」方式で対抗する
少数で対抗せず、連携をとる
悪法は司法における無効宣言で死文化させることもできる
悪法に従わず、無効確認訴訟を起こす方法もある
2.ソフトローで悪法を良き法に変える方法
ソフトローを実験的に実施してみる(ボトムアップ方式)
悪法を変えることができる「ソフトローの特徴」
ソフトローの作成・改定で重要なこと/悪法に従わず、良い法を作ろうとする姿勢の効用
3.一般人がソフトローを作るには
中間団体に参加してソフトローを作る/中間団体は変えて行かなければならない
『代理出産の禁止』は中間団体の悪い行いである
自分たちの利益追求ではない中間団体にする
第3章 正しく法を扱うこと
1.民主党政権で可能になった立法的改革
自民党時代は民間から出された法案は採用されなかった/憲法9条について
2.ハンセン病判決は、珍しい立派な判決
法律を改正しなかった国会議員には責任がある
仕事であっても嫌なことは嫌だと言える言論の自由を保障しなければいけない
原子力推進などの国策に反した人は不利益をうける
3.犯罪を少なくするには、罪を犯さない人を優遇する社会にする
警察が動いたことによって、一般人が迷惑を被ることもある
善良市民や優良企業を優遇したほうが犯罪は少なくなる
第4章 良い法社会を作っていくために、5つの「すぐにできること」
1.若い人から司法は信頼されていない
良い法社会を作るためには、私たち自身で法を変えていく
2.良い法社会を作るために何をすべきか
(1)議論を深め、選挙をする (2)中間団体に参加する
(3)自分たちで社会を作ろうという意識を持つ
(4)議論できる教育システムを作る
(5)取り決めはすべて暫定的であり、「とりあえず」であり、常に見直し続けること
第3部 新しい「法社会」再構築に必要不可欠な「分割責任論」
第1章 分割責任論の類型
1.新しい法社会に欠かせない「責任分担の思想」とは何か――分割責任論・総論
現代社会になって、やっと認められた加害者の責任
昔の裁判はバクチのようだった/減額されても被害者は必ず勝利する社会に
2.交通事故やスポーツ事故の責任はどうなるのか――交通事故・スポーツの分割責任
交通事故はだれの責任か/ゴルフのプレイ中の事故は、誰が責任を負うのか
3.善意や好意の行動で事故が起きてしまったとき――好意関係・被害者側の事情
車に乗せてもらったときの事故/ボランティアの事故
身体的素因があった場合の事故/子どもや老人の事故
4.自然災害の損害はだれが負担するのか――水害・土砂崩れの分割責任
為政者の水害責任/自然災害の損害は不可抗力か
頭の固い裁判官は自然災害に関しても古い考え方をする
5.加害者が多数の場合、被害者はだれに請求するのか――寄与度減責
複数の者の加害行為は連帯責任か、分割責任か
アスベストの責任はだれにあるのか
連帯責任より分割責任の採用が広がっている
6.「法」は誠実であることを求める――信義誠実の原則
家主も借家人にも、誠実な行動が要求される
下請の会社にも誠実でなければならない
コンピューターソフト開発契約において信義則が重視される
7.予想できないような状況が発生したとき――事情変更の原則
経済の大変動の救済がなく、倒産が増えてしまう
日本では経済変動に対する法理論がない
経済変動に耐えうる法理論を早く作るべき
8.「刑事裁判有罪」「民事裁判原告敗訴」は被害者を救済しない――割合的認定
経済裁判と民事裁判で判決が違うということについて
日本での「刑事有罪」「民事原告敗訴」は問題あり
日本は原告に高すぎるハードルを課している
9.過労死で労災認定ゼロはおかしい――労働災害
民事裁判で請求しなければ、全額補償されない/自殺と労災
アスベスト吸引と肺がん、そしてタバコの関係性
10.説明不足の医師による医療訴訟の判決――医師の説明義務
医師は十分に説明をしたのかどうか/異常時出産の危険性を説明する義務
11.医療過誤訴訟は大いに行い、医療側は情報開示をせよ――期待権の侵害
灰色の場合には患者と医師の双方に責任を負担させる
医療側が情報開示をして医療の状況を明らかにすれば、国民の理解を得られる
第2章 分割責任論の類型
1.多くの裁判官は分割責任に基づく判決を書けない――事案解明義務
今までの裁判の伝統的な方法はall or nothingの解決
裁判官の多くは分割責任の考え方がない/法科大大学院で司法改革の論議を行うべき
2.分割責任論が適用された判決
(1)〔架空取引〕/(2)〔取締役の責任(代表訴訟)〕
(3)〔ソフトウェア取引の紛争〕
あとがき
新しい時代の始まり〜多様性を求めて〜
遠藤直哉著作一覧/遠藤直哉経歴
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